立山・剱岳の3つの万年雪が国内初の現存する「氷河」と学術的に認められました。
日本の山岳には数百もの万年雪が存在するが、氷河は存在しないと長らく考えられてきました。当博物館の研究グループは、電波で氷厚を測るアイスレーダーや誤差数センチの測量用GPS(衛星利用測位システム)など新しい機器を使って、立山連峰の万年雪で氷河の可能性を探る現地観測を2009(平成21)年からはじめました。
その結果、剱岳の三ノ窓雪渓、小窓雪渓、立山の御前沢(ごぜんざわ)雪渓は流動する氷体をもつ日本初の現存する「氷河」であると判明しました(福井・飯田, 2012)。現在、他にも現存氷河が存在するのか、氷河はどのように形成維持されているのか明らかにするための調査研究が行われています。
日本雪氷学会誌に掲載された原著論文(福井・飯田, 2012)
氷河の写真(PDF)。1枚目が御前沢氷河,2枚目左が三ノ窓氷河,右が小窓氷河
三ノ窓氷河でのアイスレーダー観測
立山カルデラの新湯、国の天然記念物に指定
新湯は立山カルデラ内にある直径約30mの円形の火口湖です。もともと隣にある刈込(かりこめ)池と同じように冷水の池でしたが、1858(安政5)年の飛越地震をきっかけに70℃の温泉水が湧き出すようになったといわれています。
新湯はオパールの一種である希少な鉱物「玉滴石(ぎょくてきせき)」の国内有数の産地として有名です 立山一帯が活火山であることを示す証であり、現在も「玉滴石」をつくり出している点が認められ、2013年、富山県内で22件目の国の天然記念物に指定されました。
青白い湖面から湯気をあげる新湯
天然のオパール「玉滴石」
立山弥陀ヶ原・大日平がラムサール条約に登録。
室堂平の西側、立山黒部アルペンルートの高原バスが走っている長さ約12kmのなだらかな台地が弥陀ヶ原です。弥陀ヶ原は今から10〜9万年前に立山火山から噴出した大火砕流がつくりだした溶結凝灰岩の台地です。
弥陀ヶ原の台地の東半分は現在、ガキ(餓鬼)田と呼ばれる池塘が1000近く点在し夏には高山植物が咲き誇る雪田草原、西半分はタテヤマスギとブナに覆われた森林になっています。弥陀ヶ原の雪田草原は隣接する大日平の雪田草原と合わせて2012年7月3日にラムサール条約湿地に登録されました。
生態学上、動植物学上等の重要性を認識し、その保全を促進することを目的としています。2012年7月、世界162カ国が加盟しており、日本の登録湿地は46箇所。
弥陀ヶ原の雪田草原と池塘
白岩砂防えん堤、国の重要文化財に指定。
カルデラの出口付近にある立山カルデラの砂防の根幹をなす重要な砂防えん堤です。本えん堤の高さは63m、7基の副えん堤を合わせた落差は108mといずれも日本一を誇っています。全国で近代砂防事業を推進し、後に「砂防の父」と呼ばれる赤木正雄の計画立案による砂防えん堤で1929(昭和4)年に工事がはじまり、1939(昭和14)年に完成しました。1999(平成11)年6月に国の登録有形文化財に、2009(平成21)年には我が国の砂防施設として初めて国の重要文化財に指定されました。
白岩砂防えん堤